2019 March

 

 
 
 
久しぶりに渋谷の東急文化村に「We Margiela マルジェラと私たち 姿を消したデザイナー’白’に隠された秘密」を見に行く。伝説のデザイナーとも言われているマルジェラ、アントワープ王立芸術学院からジャン・ポール・ゴルチエェのアシスタントを経て独立、1988年から自身のコレクションをスタート。私がパリに着いた年という事もありリアルタイムの思い出深いデザイナー、1997年から2003年まで6年もの間エルメスのプレタポルテを手掛けた後2009年以降は表舞台から姿を消す・・・。謎に包まれたままファッション業界を去ったマルジェラ、挑発的でコンセプチュアルな作品とカフェやディスコなど個性的なショウの会場、1997年に撮影された写真以降公にされた写真は存在せずインタビューは書面のみ、「I=私」ではなく「WE=私達」、今も全ては霧の中・・・。モードの舞台裏と狂乱の歴史、傷ついた天才と空中分解していくメゾンの葛藤、素晴らしいドキュメンタリー映画、80年代後半のパリの雰囲気も懐かしい。

 

 

 
 
 
カール・ラガーフェルドが亡くなってひと月、モード雑誌が次々に追悼特集を組む。サンジェルマンの我が家のすぐ近くにお住まいで本当にしょっちゅう見かけていたのでにわかには信じられないけれどもう85歳だったのだ。1971年にココ・シャネルが亡くなってから低迷していたブランドを1983年からオートクチュール、翌年にはプレタポルテも担当し老舗ブランドを気鋭のデザイナーによって再興させるビジネスモデルのお手本となったラガーフェルド。フェンディの毛皮デザインもその一つ、世界的なシグネチャーブランドのヘッドデザイナーとして不動の地位を築いたカール様、白髪のポニーテールとサングラスはもう見られない。

 

 

 
 
ポンピドーセンターでキュビズムの大展覧会を見る。20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって創始された「キュビズム」、ピカソの「アビニヨンの女たち」に始まる壮大な歴史を300点あまりの作品を14のセクションに分け丁寧に解説するような巨大な展覧会。

 

 

 
 
 
 
複数の視点による対象を画面上に再構成するキュビスム、建築家ル・コルビジェはそこに自身が目指していたピュリズムの「構成と総合」のスピリッツを感じピカソやレジェとの交流を深めていったという。ピュリズムの画家アメデオ・オザンファンと共に「キュビズム以降 Après le Cubisme」を発表もしている。 現在のル・コルビジェ財団ーラ・ロッシュージャンヌレ邸はキュビズムとピュリズム絵画のコレクターで会ったスイス人の銀行家ラ・ロッシュのためにその絵画を飾るために建てられた作品、コルビジェの絵画や彫刻も影響を受けたのだろうか。

 

 

 
 
 
アフリカ美術の影響からセザンヌ屋ゴーギャンの影響、当時は絶対的であった古典的表現を一切拒否した革命的な形状の扱い、幾何学的な構図・・・。戦争のために長くは続かなかったキュビズムはその後多くの支流を生み出すことになる。

 

 

 
 
 
フェルナン・レジェ、ロベール・ドローネーなどの代表作、マルセル・デュシャンのレディーメイドまでストーリー性も力強くその流れを理解しやすい。何より驚くのは世界中の美術館はもちろん、匿名の個人から借り受けた膨大な作品の数々、ポンピドーセンターの底力を感じる展覧会。

 

 

 
 
 
サンジェルマンのギャラリーEtiennne de Causansで友人がプロデュースする染色家「大槻圭子展」を見る。伝統技術を継承しながらも世界各国を旅して出会った風景、土着の人々などをモチーフに無国籍でダイナミックな表現と
鮮やかな色彩がギャラリーに溢れる。奇しくも母と知人であり幼い頃の私をご存じ・・・、数十年を経てパリで再会し素晴らしい作品を拝見する偶然に感謝する。

 

 

 
 
ギャラリー・ヴィヴィエンヌの近くはかつてFIGAROの本社もあり、美しい古本のアーケードや装丁の専門店など
本にまつわるブティックが並ぶ。空前の日本ブームの昨今、KAWABATAやMISHIMAは大変な人気。私が働いてジュエリーのブティックはすぐ近く、この古本屋さんとのお付き合いももう30年・・・。

 

 

 
 
ワタリウム美術館に「TADANOBU ASANO 3634展」を見に行く。個性的な俳優の浅野忠信氏のドローイング展、中国で撮影中の長い待ち時間に始めたドローイングは台本やスケジュール表の裏、ホテルのメモなどにボールペンで書き始め現在までの5年間で3634枚にもなったという。その中から700点の作品が会場を縦横無尽に埋め尽くす。絵を描くプロではなくても俳優という表現者である氏の思考回路を絵の中に見るようで興味深い展覧会。

 

 

 
 
expo index グラスギャラリー・カラニスに「ガラスの植物 やわらかな実」展を見に行く。日差しを受けてキラキラ光るガラスの植物、トレーに並ぶ標本のような作品はどれも繊細で可愛らしい。実際には存在しない、作家オリジナルの不思議な植物は透明感に溢れた素敵なオブジェ、ガラスの持つ美しさと柔らかで自然な透明感を再発見する。 page top

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